パトリシア様より

石化されるとき、普通はおびえた表情をします

だけど時々幸せそうな表情や快楽におぼれた表情もあります・・・・

これは、最初として最後としての恋物語・・・・・

 
『冷たい君・冷たい僕』
 
ユーリが来る3年前、まっくら森は別名石の森とうわさされていた
だが、一人の冒険者がやってくるまでは・・・
 
森の中で一つの悲鳴が上がった
「いやぁぁぁぁぁぁぁ、た・・・・助けてぇぇぇぇぇ」
走ってきたのは一人の小さな幼い女の子
半ば瞳から涙が出ていた、背中にはリュックをしょっていた。
リュックからいろんなものがこぼれ落ちた
「どうして・・・・どうした私たちが・・・・・」
どうやらこの女の子はピクニックに出かけている途中だったらしい
突然女の子が木の根につまずいて転んだ、なんとか正座に近い姿勢で立ち直った、だが
「いった〜い・・・・え・・・もう・・・」
女の子の目の前には女の子より少し年上のの少女がいた。
その少女瞳は真紅の瞳できれいな髪の中には4匹の蛇がいた。
「いや・・・・来ないで・・・」
後ずさりする女の子、と突然女の子の足先が灰色に変わっていった。
灰色になったところは硬く冷たく感覚が全く無くなっていく
女の子は石化から逃れようと涙いっぱいになっていた。
「いや・・・・いや・・・・・助けて・・・・」
必死にもがく女の子、だが石化は容赦なく女の子を襲った
「苦しい・・・よ・・・これって・・・・夢・・・だ・・・よ・・・・ね・・・・・」
女の子は最期の言葉を残し、輝かしかった瞳も灰色の虚ろになってしまい、女の子の意識は途切れた。
一人の少女は頭をぬぐい
「ふぅ、これで98体目、あと二人かぁ」
とため息交じりの声で言った。
この少女はメデューサのメイという名前
この森に迷い込んでしまい、約四分の一のエルフを石化させた。
それからというもの、この森に迷い込んだもの片っ端から石像に変えていった。
今までに見てきた人たちはいろいろだった。

へたりとへこんだまま呆然と驚いたままの村娘の石像

恐怖のあまり泣き出したままの5歳くらいの少女の石像

最後に会いたかった彼女のことを思いながらの男性兵士の石像

おもちゃの鉄砲を構えながら座り込んだままの少年の石像

何が起こったのかわからずのほほんとしているお嬢の石像

手を見つめたまま恐怖の表情の女魔術師の石像

抱きしめあったまま目を閉じている少年少女の石像

もうだめだと確信している無表情の少年の石像

どれも冷たく硬い石像になっている

辺りを見回したそのとき、一人の冒険者が来た
そこらにいる冒険者と同じ。
早速メイは草陰に潜んだ。
・・・・だが、冒険者は気配を読んだのか
「ここにいるんだろ」
呼びかけてきた。
メイはしぶしぶ草陰から出た
「あなた只者じゃないね」
「そっちこそ、石化能力あるんだろ」
「そうよ、」
「そうか、ならその身体二度と動けないようにしてあげるよ」
と冒険者はいった
メイはふと思った

(こいつ・・・・余裕の表情をしている・・・何かある・・・・・わけないか
あんな丸腰だもの)

見るからにして冒険者の服装は至って単純だ。
石化対策などしていない様子
メイは冒険者がロングソードを抜くなりメイの瞳は赤く光った。
冒険者はそれを待っていたかのようにロングソードをしまった。

(こいつ・・・・何やっているんだ)

と思ったところで冒険者の足は灰色になっていく
膝部分で石化したとき冒険者は呼びかけるように言った
「君・・・・よく見るときれいだね、もうちょっとこっちに来てくれないか?」
「え・・・・えぇ」
メイはその冒険者の言うとおりに近づいた。
「赤い瞳・・・・きれいだね」
「・・・・それお世辞?」
メイの言葉を無視するかのように続けていった
「後ろ向いてごらん、何もしないから」
「・・・・・えぇ」
メイは承知していた、冒険者が後ろから思いっきりロングソードで斬ると
だがメイは冒険者の一言で、少し幸せだったのでそんなことはどうでもよかった
そしてメイが冒険者に背を向いたとたん、冒険者はメイの腕を思いっきり引っ張り
メイの手をつかんだ、そしてメイの顔を見せるように鏡を見せた。
「え・・・・・しまっ・・・・」
気づいたときにはもう遅かったメイの身体は冒険者と同じように灰色になっていく。
「・・・・これでおあいこだな・・・・」
「あなた・・・・騙したのね・・・・・」
「いいや、君がきれいということは事実だ」
「・・・・・本当?」
「あぁ・・・・・君がそういう能力が無ければだが、今そういう能力があろうがなかろうが
 君はきれいだ・・・・」
目と目があう冒険者とメイ、ほとんどが静まり返った、二人が石へと変わる音以外に
冒険者は胸まで石化したときメイに聞いた
「最後にひとつだけ聞きたいことがある」
「何・・・・?」
「君の名前は」
「メイ・・・・メイよ・・・・・
 そういえばあなたの名前は?」
「僕の名前は・・・・無いさ・・・・
 無名の冒・・・・け・・・・ん・・・・・者・・・・・・さ・・・・・・・・」
ぴしぴしと音を立てながら無名の冒険者は石像へと変わった
「・・・・・・・私もそろそろね・・・・・」
そういうと口が動かなくなった。
(でも・・・・・100人達成できなかったなぁ・・・・・・・
 そうだ・・・・私が・・・・・100人・・・・・め・・・・に・・・・)
メイの意識も途切れ、メイの身体は石像になった
森にたたずむ2体の石像、その表情はもっとも幸せそうな表情だった・・・
 
その後まっくら森の事件はたったの3ヶ月で謎のまま終わりを告げた。
ちなみにメイと無名の冒険者の石像は4大国のうちのどれかが引き取ったという
だがその真偽は分からない。
 
おわり

パトリシア様から『9999hiT記念絵』を題材にした小説を戴きました。
感謝。
名も無き冒険者とメデューサの少女の悲恋物語ですね。
しかし、それが幸せなのか不幸なのかは本人達にしか判らないコトなのでしょう。
石化は死ではなく、石化解除の魔法で元に戻れる訳ですから、
引き取られた先で物語は続くのかも知れないですね。

2004年の残暑見舞に続編を戴きました。

パトリシア様のサイトです

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