《PiXiV-050》
『かもにょげらー・コパイロット- ルクシア -』
投稿日:2008年10月21日 01:27
カルマエンドから続くと予想される『あるは外伝』では
ロストブラッドの3人はタイムスリップ組にしよーかなーと想っていますが、
『正史』では『ティスカリ家』に無事に戻って来たコトになっております。
云うなれば『ロストブラッドルート・ノーマルエンディング』バージョンです。
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コレは『第1次ピクロボ大戦』が終結して少しした頃のお話。
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敗北した秘密結社軍は多くの幹部が一時逮捕されるなど、
中枢部に大きなダメージを受け、総体としては既に崩壊していた。
しかし、小規模な組織である『ロストブラッド』は秘密結社軍における発言力が低く、
中枢部からは離れた立場にあったために当局の追及の手も緩く、
1人の欠員も無く『ティスカリ家』に戻って来ていた。
『大戦』における総合的な収支はほぼプラスマイナスゼロであり、
ティスカリ家再興の夢は叶いもせず、潰えもせず。
今後も表向きは零落した貴族、裏では秘密結社として
現状を維持するコトとなったのである。
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そんなこんなの昼下がり。
『ルクシア…? ルクシアったら!』
自分の名を呼ばれてルクシアがハッと我に返る。
『すみません、ナーサお嬢様。何か御用ですか?』
『何か、じゃありません! この頃
様子がおかしいですからどうしたのかと!』
『い、いえ。そんなコトはありません』
努めて平静な顔を保ったつもりのルクシアだったが。
『私に判らないと想っているのですか?』
いつもはおっとりとしたナーサであるが、こんな時は驚く程に強い眼差しをする。
『ふむ。私も気になっておりました。
普段と比べて個々の動作に0.2〜0.5秒ほどの遅れが見受けられます。
異世界軍の撤収状況が気になっているのではないですかな?』
『……。』
セバスチャンの言葉通りだった。
地球侵略を諦めた異世界軍は多少の混乱はありながらも撤収を進めている。
予定では完全撤収も間近であった。
だがソレは、この機を逃せば2度と帰れないコトを意味していた。
『…帰りたいのですか?』
ナーサが問う。
しかしルクシアは首を振った。
『異世界軍にはもう戻れませんし、戻りたいとも想っていません。
…ただ、妹のエルレアが異世界軍に居る筈なんです…』
『まぁ…』
その妹がルクシアの唯一の肉親であると云う。
異世界軍と秘密結社軍はムーンベース戦においては協力し合ったとは云え、
ソレは防衛側戦力に打撃を与えるための表面的なモノであって、
本質的には相容れない関係であった。
致し方ない成り行きではあったが、
秘密結社軍に籍を置いたルクシアがそう簡単に異世界軍に戻れるワケはなかった。
暫し、重い沈黙が場を支配する…。
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『…ペンギヌスですわ』
突然、ナーサがぽんと手を叩いて云った。
『え?』
『ペンギヌスが如何なさいましたか?』
異世界軍と秘密結社軍が協力した時期に、
かもにょげらーの設計を元に異世界軍が造ったロボット、ペンギヌス。
協力関係が破綻した後の、かもにょげらーとの激闘はまだ記憶に新しい。
『あの時の会議で聞いたのですよ。
【エルレア】と云う人がペンギヌスのパイロットになる予定だと』
『ペンギヌスって!! こないだ、やっつけちゃったじゃないですかぁああぁぁぁぁっ!!!』
ああ、どうしよう。どうすれば。
オロオロするルクシア。
こんなにも慌てたルクシアは観たコトがない。
『まぁ落ち着きたまえ。回収したペンギヌスのコクピットはモヌケのカラだったではないか』
撃破したペンギヌスの機体はロストブラッドが回収している。
コクピットの損傷はほとんど無かったし、パイロットは無事に脱出したとみるのが妥当であった。
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その後、すぐにロストブラッド構成員No.19鴨沢芹が異世界軍にちょこっと潜入して調べてみたトコロ、
ペンギヌス敗北以後、エルレアは所属部隊に戻っておらず、消息不明となっているコトが判明した。
『ほら、ひょっとしたら、ルクシアを探しているのかも知れませんよ』
『…そ、そうでしょうか』
少なくとも、所属部隊に戻っていないのであれば、この地球のドコかに居るコトは間違い無い。
『あ、あの、もう暫くココに居させてもらっても良いでしょうか…?』
『無論です。有能な人材を失うのは惜しいですからな』
『もちろん、ずーーーっと居ていいんですよ』
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さて、その頃のエルレア。
『おのれ、かもにょげらーめ!! この屈辱を晴らさずしておめおめと帰れはしないわ!!』
姉のコトなど考えてなかったと云う…。
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姉妹が再会するのはもう少し先のお話である。
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