PiXiV-034

『セバスチャン・D・アウル』

投稿日:2008年09月06日 00:06

【爺や】

コレは『第1次ピクロボ大戦』が始まる少し前のお話。

『ルクシア? セバスチャンはどうしました?』

その日、朝から感じていた違和感の正体に気付き、ナーサが訊ねた。
屋敷内の全てを取り仕切るセバスチャンは多忙であり、何時でもナーサの傍に居るワケではない。
しかし、夕刻まで一度もその姿を観せないなどと云うコトはなかった。

『本日は朝から休暇を戴いております』
『…そうですか』

執事と云えど、定期的な休日はちゃんとある。
しかし、今日はその日ではなかった。
予定外の休暇であっても、ソレを事前に告げずに休むなど、セバスチャンらしからぬ行動であった。

『体調でも崩されたのかしら』

…暫し考えて、【体調を崩したセバスチャン】を全く想像できないコトに気付く。
いつも鋭い表情をした一分の隙も無い長身の執事は、ナーサにとって頼りになりつつも少し緊張してしまう存在であった。

その時。

『只今、戻りました』

ウワサをすればなんとやら。
セバスチャンがその姿を現した。
その様子はいつも通りで特に体調を崩したようには観えない。

『急に休むなんて。何かあったのですか?』
『申し訳ございません。実は…』

セバスチャンが内ポケットから携帯電話を取り出し、その待受け画面を差し出した。
ソコには、生まれたばかりの赤子を抱き上げたセバスチャンの姿が…。

『初孫が生まれたとの知らせを受けましたので、会いに行って参りました』

そのコトにも驚いたが、ナーサがソレ以上に驚いたのは、待受け画面の中の好々爺然としたセバスチャンの笑顔である。
顔を上げると、ソコにはやはり今まで観たコトの無い、少しテレたようなセバスチャンの顔があった。

『おめでとうございます。セバスチャン。 いえ、今日からは【爺や】と呼びますね!!』

『は?』

一瞬、呆けたような顔を観せたセバスチャン。
ソレもまたナーサがコレまでに観たコトの無い表情であった…。

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